
光が、少しだけ遠い。
白くほどけていく午後。
海も空も、境界を失い、
世界はやわらかく溶けていた。
ファインダーを覗くたび、
輪郭がにじむ。
それは光のせいか、
それとも、私の時間のせいか。
波の音が、やけに優しい。
風が、やけに静かだ。
まるでこの世界が、
別れの準備をしているみたいに。
振り向いたら君は、
確かにそこに立っていた。
透き通るような影を落としながら、
消えかけた夏の真ん中で。
私は知っている。
この光を撮るのは、
そう何度も来ないことを。
身体の奥で、
静かに砂が落ちていく音がする。
だから私は、
溶けてしまう前の世界を
ひとつ残らず溢さぬように
シャッターを切る。
消えていく、この世界に。
それでもいい。
この一枚の中で、
誰かの記憶が生き続けるのなら。






