「白い記憶」

「白い記憶」

輪郭は、ゆっくりとほどけていく。

境界は曖昧になり、
光はすべてを均して、
確かなものほど遠ざけていく。

名前を呼ぼうとすると、
声は白に吸い込まれ、
残るのは、ただ気配だけ。

キヲクは、いつも正確ではない。
思い出そうとするほどに、
細部は崩れ、
やさしい誤差だけが残る。

けれど――
消える前が、いちばん美しい。
そして
消えた後に、ずっと愛おしい。

燃え尽きる直前の灯りのように、
ほどけきる前の輪郭のように、
失われるとわかっている瞬間ほど、
世界は透明になる。

振り向いたその姿も、
きっともう完全ではない。
それでも、曖昧だからこそ、
こんなにも美しい。

白は、終わりの色。
そして、
すべてが消えてなくなる直前の色。

世界は少しずつ見えなくなっていく。
輪郭を失い、
温度を失い、
やがてキヲクになる。

その途中の、
いちばん美しい場所で。

model:美桜

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